インタビュー コラム バーチャルワールド最前線

「もっと自由に」メタバーズ島谷直芳氏が語るメタバースの理想形とは。

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2006年6月、セカンドライフを中心とする「メタバース(仮想世界)」をフィールドに活動を行う株式会社メタバーズを設立した島谷直芳氏。日本でいち早くメタバースに可能性を見出したひとりである同氏にインタビューを行った。
―メタバースについてはいまだ様々な解釈がありますが、島谷さんの考える「メタバース」とはなんでしょう?その構成要素は?
私の考えるメタバースの構成要素は3つあると思っています。
まず「表現力」。感情移入ができるくらい「きれいなものはきれいに」表現できるかということです。3Dという要素は表現力に属しますが、感覚的にいうと「絶対に絶対に必要か」といわれて「まあ必要かな」という程度ですね。
次に「ものづくり」のインフラ。オープンにものづくりができることが必要だと思っています。
最後に現実の通貨とリンクした「仮想通貨」。これがあることで市場経済原理が働き、より良いものをつくるモチベーションになります。そして、このモチベーションを生かすためには前述の十分な表現力と自由なものづくりのインフラが必要になります。3つの要素は互いに関連しているものです。
ちなみに「ネットワーク」はこれらの前提です。通貨やモノの流通に必須です。
―メタバースサービスは多くありますが、その中で島谷さんの理想に近いものは?
完全ではないですが、バランスでいえば今はセカンドライフです。Thereなどはその意味では結構ぎりぎりかもしれません。メタバース内で簡単にものづくりができる感覚は必要です。そこは、制作ツールもクライアントソフトに含まれているセカンドライフが他に比べて優れています。
―島谷さんはアドベンチャーゲームが好きだと伺いました。仮想的な世界という意味では似ている部分があると思いますが、アドベンチャーゲームが好きだったということは今のビジネスを行っていることに影響はありましたか?
アドベンチャーゲームが好きだったという感覚は今の自分にも影響しているかもしれません。
なぜアドベンチャーゲームが好きだったかというといくつか理由があって、ゲームにもよりますが、まず基本的に「リアルタイムでない。自分のペースでできる。」ということがありました。次に、やはり「世界に入り込んでいる」という感覚が好き、というのがあります。そして小説と違って「アクションが世界に影響を与えられる」ことが挙げられます。特に本筋とは違う部分でも作りこんであるものが好きでした。好きなゲームといわれれば・・・「ウイングマン」とか好きでしたね(笑)。(編集注:「ウイングマン」は1984年に発売されたパソコン用アドベンチャーゲーム。ストーリーと関係のないコマンドにも柔軟に反応することで話題だった。)
こうした体験がメタバースに魅力を感じていることにも影響していると思います。
―最近はセカンドライフに対するネガティブな意見なども聞かれますが、そうした意見に対してはどう思いますか?
特に間違ってはいないと思います。ビジネスの観点でみている人はどうしても前のめりになってしまうのもわかりますし。ただ、それは期待値によると思います。最初になにかの情報で期待値が上がりすぎてしまえばがっかりしてしまうでしょうし、期待値が低ければ「こんなこともできるんだ」と思ってもらえます。
自分たちとしては最悪、メタバース自体が駄目になってもOKなくらいの体制でやっています。しばらく息をひそめて、何年後かにまた復活できれば(笑)。
なので、あまり気にしていません。
―仕事をする上での基準などはありますか?
「楽しいか」ということを基準にしています。それは仕事の内容もそうですが、仕事の相手についてもです。例えば、(ロサンゼルスに本社を置くインタラクティブマーケティング企業)Centric社と業務提携したのも、先方の担当の方がすごいSFマニアだったことがきっかけです。お客様でもクリエイターでもこだわりを持っている人は好きですし、ファンになってしまうんです。で、ぜひお仕事させてくださいとお願いしちゃう(笑)。ただ、こうした基準でできるのも、今は幸い良い立場にいられるからというのもありますが。
―なるほど。では、そうした仕事を通じて、どのようにメタバースを広めたいと考えていますでしょうか。
誤解を恐れずに言えば、不特定多数のみんなに使ってもらうためにアピールするという考えはないです。特にアピールしていかなくても広がると思っていますし、私としては自分のまわりの好きになった人に伝えていっている感じです。
もちろん、広がっていくのが嫌というわけではありません。メタバースを使う人が広がって母数が増えていけば、おもしろい人も増えていくのでうれしいです。
―最後に、メタバースに期待することを教えてください。
もっと自由になりたいですね。例えば、アバターの姿形や大きさだけでなく、重力や光や熱や天気なども自由にシュミレーションしたい。架空物理シュミレーターのようなものです。今のメタバースは地球をモデルにしていますが、そうではなく、本当に根本から違う環境が表現できれば。例えば、銀河鉄道999で行く星々みたいな世界です。これまではマンガなどで表現していたものが、世界として生み出せたらいいですね。最初の話につながりますが、感情移入できるくらいまで完成度が高くなれば、十分に対価を払ってもらえる価値を持てるかもしれません。
突き詰めると、メタバースのインフラとしてはニュートラルなものになってほしいです。そこからあらゆる要素をより下に下に掘り下げられる自由度をもったメタバース。それが理想です。

THE SECOND TIMES 企業紹介
株式会社メタバーズ

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